就活におけるジェンダー&左利きについての補足

先日弁護士の新田先生のゲストトークに参加させていただき、本日配信されました。‎ジュエリー法務のインクルージョン💎:Apple Podcast内の第164回 ゲストトーク:坂口千尋様(Pio by Parakee)

 

特に事前に質問が決まっていたわけではなく聞かれたことに答えていく方式だったのですが、終わってみたら就活話のウェイトが結構あったなという事と、私の中ではさらっと過ぎた話だけど現就活生の中には動揺してしまうのではないかと思う内容が含まれていたのですでに古い話ではありますが詳細を書くことにしました。

という訳で基本はジュエリー職人もしくはデザイナーに就職を希望している人へ向けた採用側からの実情をお書きします。(最新の話でない点はご留意ください。)

配信では6分辺りから就活の話が始まります。

 

~幼少期から中学生まで~

高校の就活から書こうと思いましたがたぶん少しだけこの部分の説明が無いと、後の考え方について分かりづらいと思ったので書きます。

就活部分のみを読みたい人は「~高校生の就活~」からどうぞ。

まず私は小さい頃から美術関連の仕事に就きたかっので手に職至上主義であり、さらに周囲にあまり大学での知識やメリットを役立てられている人間がいないと感じた為大学に対して全く興味がありませんでした。(小さい頃わずかに周囲にいた賢い人間が逆に高卒だった。)

さらに園児のころから相当弁が立ち様々な法則性を発見するのが得意だったりしましたがそれを話すと大多数の大人からは怖がられたため、30歳くらいになったら楽になるだろうなと漠然と思っていました。(それは実際に当たっていました。)

中学に入り、進みたい高校は都立工芸高校と決まっていた為そこの推薦を受けられる水準を守っていれば問題ないという考えでした。

そして恐らく大多数の高校生が進む「普通科」という言葉にも拒否反応がありました。

しかし授業でだいたい寝てても成績が良いという非常に世間をなめたような存在でしたので度々進学校を目指すよう担任との話し合いがありましたが拒否し続けました。

※工芸高校は当時都立校内で唯一無二の伝統工芸を習える特殊な高校で入るのに結構上の成績が必要ですが、括りが工業高校のトップなので先生たちの中では普通科の方が上という気持ちを持っている方が少しいる。(今はそこをモデル校とした学校が増えました。)

結局、推薦の倍率が非常に高い高校であった(当時私の科は4.6倍、凄いときは10倍越えの科もあったとか。)のですが推薦で入ることに成功しました。入ってから聞いた話ではリーダーシップなどを重要視していたのでトークスキルの高さが一役買った様でした。

そんなわけで勉強で上を目指していたら挫折することは恐らくあったでしょうが、がっつり受験勉強する機会もなかったので勉強による挫折というものはないままに高校に進みました。そして高校も工芸とデザインの授業が多く普通教科が少ないので最終的にその辺りで躓くことは一度もありませんでした。

基本的に淡々とこなしている(様に見える)のでチート扱いされることも多く小学生~社会人まで時々妬みをかっていました。途中からわりと調整できるようになりました。

 

恐らくこの全く挫折の無いベースがあったからこそ就活における理不尽な話が自身に何も響かず、その都度すぐ方針転換していけた理由だと思います。

 

~高校生の就活~

配信内でも少し話しましたが高校生の就活はちょっと変わっていて基本高校側と企業が1つずつマッチングさせるような特殊な方法で就職試験を行います。つまり、募集2名だったら2名までしか受けさせないで残りは他の企業を受けさせるという調整を担任が行っていました。

某大手ジュエリー会社は毎年枠があるとは限らないけれど1~2名の募集があることを1年の時に知り、そこを受ける方針で固めていました。(前述していますが大学には興味が無かった。)

成績優秀者から順に好きな就職先を選べる方式でしたので、とりあえず受ける権利を得ました。

そして担任から下記説明を受けました。※担任は3年間同じ人です。

「実は今年は男子が欲しいと先方から言われている。男女雇用機会均等法というものがあるので表面上は出さないが暗黙の了解でそういった話は起きる。しかし僕は成績優秀者から順に好きな就職先を選べるという事を1年の時にあなたに説明したので、このままあなたにその会社の試験を受けてもらう事にする。だから落ちたとしてもあなたのせいではない。」

これを聞いたとき、実は特にショックは受けませんでした。世の中がそういう空気感であることは知っていたし男女雇用機会均等法などというものが存在している時点で大分均等では無いのだろうと思っていました。(なんと調べたら私の生まれ年と法の設立が同じ年でした!)

そして、100%道が断たれたわけではない(試験自体は受けられるしその会社に女性の職人がいないわけではない)のでとりあえず試験は頑張ろうと思ったとともに、何か理不尽に落ちたと感じた場合は業界全体がそうであろうから独立準備に舵を切ると決めて試験に臨みました。

技術試験と筆記は順調に終え、そのあと3人の面接官との面接にうつりました。

そこで予想外の質問「なんで左利きを直さなかったのか。」という話になりました。

正直相当びっくりしました。なぜなら全く支障を感じたことが無く、クラスでも加工が早い方だったので直さなければならない理由が見当たりませんでしたし考えたこともありませんでした。

私は特に加工に支障があったことは無いですよという話をするしかありませんでした。

技術試験の担当者はかばってくれましたが、そのやたらと左利きに関しての質問を長引かせて終わらせようとしなかった人間の嫌そうな顔は今考えても異様でした。

あれは圧迫面接の一種であったと後々思っています。

本当に左利きだから落としたかったのか落とすための理由を見つけたと思ったのか真相は不明です。

そして不合格の知らせが来た時、よし独立に向けて動こう!と決まりました。

今思っても先に事実を教えておいてくれた担任のおかげで別ルートを考えていたので落ち込むことは全くありませんでした。この点はとても幸いだったと思います。

独立には量産の知識が必要不可欠と考えて初めに鋳造屋さんに勤めましたがブラックなのと親の入院が重なりそこはすぐ辞めました。

そして高卒ですぐ辞めてしまったら就職先は見つかりませんので当時アンチ高等教育派(笑)でしたが大学か専門学校かを選ぶこととなりました。

美大は授業内容が高校にかなり近くジュエリーの学科も日本の大学には無かった為、独立のためには実践的ではないと思ったのでジュエリーの専門学校(ヒコみづのジュエリーカレッジ)のハイジュエリーコースに行きました。

本当に運よく素晴らしい先生たちに当たったので技術もデザインもレベルアップすることができて専門学校というもののイメージが変わりました。

 

~専門学校生の就活~

さて、初の就活から4年ぶりに就活です。

実は高校の時より男女差が意識されなくなってきているように様々な所から感じました。

1度会社をすぐ辞めている為、その他の実力差をなんとか見せる必要があるという状況でした。

独立を視野に入れているため、なるべく加工について多く学べそうな会社に絞った事が失敗でした。

最終面接まで残っては落ちるを繰り返しました。(多分最後になって前の会社が足かせになっていると感じました。ざっと絞ってる時点ではそこまで見ていないのでしょう。)

デザインの先生から能力値をかわれていた為、志望をデザイナーへ変更することを勧められました。

その先生はまさに私が高校で職人として落ちた会社のデザイナー出身という面白いめぐりあわせでした。この先生はその会社のデザイナーの面接官でした。

ここでまた就職ジェンダー問題裏事情を知ることとなります。

「職人世界はいまだ男尊女卑が強いから、俺はデザイナーをおすすめする。デザイナーの女性たちは生活とのバランスをとりやすい環境にいる。面接官だったのでデザイナーを採ろうと思って能力だけで見ると圧倒的に女性が優位だったから確実に就職先見つかるよ。

ここまでは先生の思うデザイナーのメリット。下記から就活ジェンダー問題話。

「でも女性ばかりになると産休などが重なってしまって困ることがあるのでバランスをとるためにたまに1ランク下げてでも男性を取らなければならない年がある。といっても1ランクでも無理で2ランク落とすこともあるんだけどね。ははは。」

私はこの先生は超好きであるがとてもすごい事を言っているなと思いました。

先生のデザイン画はとても上手く自身に満ち溢れているし独立後も順風満帆で皆が憧れる生活をし、教えるのは趣味でやってて学校での稼ぎは全て皆の飲み代に使ってくれるような豪快な先生でした。

でも先生も最初の就活での採用では自身がそのランク下げが適用されていたかもしれないという事実には到底思いを馳せたことがある様には思いませんでした。

そして、その「1~2ランク下げてでも」の年に当たった1~2ランク上だった女性たちはどこへいったのか。別のデザイン会社へ入れただろうか。

この話を聞いて高校の時の就職試験が到底入れる年ではなかった可能性が有るとより確信しました。特に高校の担任が事前に話してくれたのはそういう事情だったのだろうと思います。(担任は亡くなっている為すでに話を聞くことは出来ませんが。)

最終的に私は中途の枠で㈱ケイウノを受けることとなり1次面接からなんだかウエルカムな状態でそのまま2次3次と進み最終的には凄くあっさりと大き目の会社に勤めることとなりました。

新卒倍率10倍の会社なので学校側が驚いていたのを覚えています。

自分に合った会社選びは重要ですね。

 

実は高校での就活話をさらっと話すと「でもその会社に女性の職人いるよ?」と言われることはあります。そのお気持ちは分かります。ただし現実は花形部署の移動の希望が叶いにくかったりという話は後から聞こえてきたので、うっかり入らなくて良かったかもと実は思っています。

 

~就職後のお話~

ここまで左利きとジェンダーのお話をしていましたが、入った会社が今までとだいぶ価値観の会社だと思いました。

簡単に言うと実力至上主義。

先輩であろうが仕事ができないなら給料は一定以上上がらない。

そして何故かやたらと多い左利き(笑)

工房の部長も左利きで「え、面接で左利きについて言われることなんてあるの?なんで?」という感じでした(笑)

そしてジェンダーマイノリティの方も少数ですが面接時に公表して入社してきていました。

大き目の会社だけど色々形を変えながら成長するベンチャー寄りというのが私の印象でした。

あ、1年目の時だけ花形部署に優先的に同期男子を行かせる話があったらしく上司がそれについて気まずそうに、能力的にあなたの方が上だから僕は反対したんだけどねと説明してくれました。

皆いつもちゃんと事前に説明してくれて優しいなと思います。しらばっくれることも出来たのに。

そして私その時その部署に行きたいタイミングではなかったので全然問題ありませんでした。(新しく習った技術を安定させている最中だった。)

でも結局2年目以降、個人個人の能力が把握されて以降は実力至上主義で独立までの間、オールマイティとして育つべく専門部署を渡り歩いたり研究の材料買ってもらったりと大分自由にさせて戴きました。4年くらいいる予定が7年いてしまいました。中々面白い会社でした。

 

 

~独立と就活中の方へまとめ~

独立後も前の会社にいる人たちと集まったりします。

それとともに独立組も多いのでそこもまたある意味コミュニティになっているので独立して6年くらい経ってるんですがその感覚は薄いです。

独立は基本全て自己責任になるわけですがとても性に合っています。

就活話はなかなかシリアスになってしまう上に長いのでお話しする機会がありませんでしたが、良い機会でしたので書いてみました。やっぱ長い!ここまで全部読んだ人いますか?

これからジュエリー業界に就職活動する人はまたどんどん状況が変わっていると思います。

なんせ私が就活した2つの期間にも空気が変わってる感じがありましたから。

もしかしたら私の受けた会社のような古い風習などにぶち当たることもあるかもしれませんが、まぁ、そこは合わないですよ。次行こう次!

社会問題に立ち向かうことも大切かもしれませんが、自分の思い描くキャリアプランを実践するのにあたり取捨選択することも大事だと私は思います。

ですので現行制度に必ずしも真っ向勝負を挑むことが得策とも限らないし、戦いたいタイミングで戦うことを選んでももちろん良いと思います。

ジュエリーデザイナー&職人の独立に関しては割と大成功を目指さない限り初期投資は他の職種に比べそこまで必要なく、なんとか独立してやっていけてる方が多いです。

独立したらとりあえずは自分ルールで会社を作ることになりますので、向いてるかもと思う人は独立という道も候補に入れてみてはいかがでしょうか?

もちろん出来るうちにしっかり能力値は磨いてくださいね。スタートダッシュが肝心です。

 

思いついたままを書きましたので、わかりにくい点あるかもしれませんがご了承くださいませ。

ご質問あればお気軽にどうぞ。

 

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コメント: 3
  • #1

    (土曜日, 06 3月 2021 01:49)

    こんばんは、Twitterで流れてきたので拝見しました 。
    現在ジュエリー制作職の就活中で、さらに性別女・左利き・独立希望と当てはまることが多く、驚きました。

    今年度はコロナの影響か求人が少なく、今後どうしようと不安になる毎日ですが、タイミング次第ではなんとかなるのかなと少し安心出来ました。
    あまり採用の裏話を聞く機会が無かったので、書いていただきとても嬉しいです。
    ありがとうございます。

  • #2

    Parakee (土曜日, 06 3月 2021 02:12)

    紅さん、こんばんは。
    コメントありがとうございます。

    就職活動、コロナで求人が減っているであろう事想像に難くないですね。
    しかし実は私たちの時も何回かそういう氷河期のようなタイミングはありました。つまりランダムに繰り返すという事ですね。
    不安になるお気持ちもわかります。しかし今が正念場です!
    もうこのタイミングだからこそなのですが、ひたすらに求人が無いか自分から問い合わせを入れてください。
    今実は忙しい小さい工房は存在します。
    今は大手の方がダメージを受けているという印象です。
    正直な所、私の会社は今までで一番忙しい状態です。
    そして万が一4月になっても諦めないでください。4月に入ってすぐに辞めてしまう新人というのは毎年出ます。そのタイミングで中小・大手に枠ができる場合があります。とにかく粘った物勝ちです。
    ブラック企業にあたる可能性もあるけど、どちらにせよセミブラックが多い業界です。職歴がつかないよりは次につながるのでちょっとだけ利用するというのも手だと私は思います。
    もし何か聞きたい事があればTwitterなどで聞いてください。

  • #3

    (月曜日, 08 3月 2021 09:47)

    Parakee様、こんにちは。
    コメントのご返信ありがとうございます!

    今まではどちらかと言うと受身で就職活動をしていたので、もっとこちらからアタックしてみようと思います。
    また何かありましたらTwitterなどでご相談させていただきます。